東京駅八重洲口、日本橋駅の老舗蕎麦屋「やぶ久」。明治三十五年、当地にございました「やぶ」というそば屋を初代、久次郎が引き継ぎ、自分の名前の一文字「久」の字を付け加え、屋号を「やぶ久」といたしました。以来、四代百十余年、変わることなくこの地で営業いたしております。特注厚削りの本枯鰹をじっくり煮出した濃い目の汁は、やぶ系本来の伝統の味。国内産最上級そば粉を、初代からの足踏み製法で打ち上げております。添加物を一切使用しない、挽きたて、打ちたて、ゆでたての本物の味をご賞味ください。
そば作りというと、多くの皆様は、大きなそば切り包丁で寸分の狂いもなくそばを切っていくそば切りの光景を思い浮かべられるかと思います。しかし、そば作りで一番大切なことは“そばを練る”工程なのです。 木鉢と呼ばれる直径七十センチ程の大きな鉢にそば粉を入れ、十本の指、二つの目、耳、鼻に全神経を集中した上で第六感を働かせ、丁寧かつ迅速、大胆にそばを練り上げていきます。この作業の中で、蕎麦の香り、こし、風味の八~九割が決まるといっても過言ではありません。“タンポ”も非常に重要です。タンポとは、もり汁を入れておくための陶器の瓶のことです。今日とった汁をタンポに移し、ゆっくりと常温まで冷まします。翌日、タンポを一時間程湯煎し、ゆっくりと常温まで冷ますのです。3日目にやっと一人前のもり汁となり、お客様にお出しできる汁になります。ご存知の通り“そばつゆ”は、水、鰹節、醤油、味醂、砂糖だけでできています。そのどれもが主張し過ぎることなく、混然一体となった汁こそが最高級のつゆといえるのではないでしょうか。お店に置き換えますと、味、サービス、店舗等すべてのバランスが整って初めてよりよい商売をさせていただけると考えております。
「木鉢会」は、家伝の技術と伝統をいち早く習得すべく、そば店の三代目以上の現役達を会員とし、各のれん間の技術交流、そば技術の伝承と向上に寄与することを目的といたしました。当時は、そば店の繁忙期が続き、新規参入も多く「蕎麦の味」に乱れが生じ、蕎麦作りの技術の断絶が心配されておりました。そこで会の名称も蕎麦作りの根本であります「木鉢」を名乗り、絶えかけていた木鉢の大切さを訴えると共に、温故知新を旗印に、基本は重んじるものの旧弊に陥ることなく、新しい時代の流れに対し、精進することに努める所存でございます。
「外二」とは、小麦粉は2割ですが、それに対して、そば粉が10割という割合で作られます。「二八」は、そば粉8割に対して、小麦粉が2割でうたれた蕎麦のことを言います。この割合の違いから、「二八」よりもそば粉の量の多い「外二」の方が蕎麦の風味をより味わう事ができるのです。蕎麦本来の味、香り豊かで、切れにくくのどごしの良い蕎麦を楽しむことができます。北海道産の最高級そば粉を使った「挽きたて」「打ちたて」「茹でたて」の蕎麦はもちろん、添加物を一切使用せず、厳選された素材を存分に引き出した本物の味をご賞味ください。また、伝統の足踏み製法がより美味しさを引き立てます。
本枯節という厚削り1.2mmの上質なかつお節をふんだんに使った濃いめのつゆは、「やぶ久」の伝統の味です。ご存知の通り“そばつゆ”は、水、鰹節、醤油、味醂、砂糖だけで作ります。その一つ一つの素材が主張し過ぎることなく、バランスのとれた汁こそが最高ランクのつゆだと考えます。